Plofile(プロフィール)

制作によせて

制作風景

黄金背景テンペラ画は12世紀頃から15世紀頃にかけてヨーロッパ、イタリアなどで盛んに行われた古典技法です。主に祭壇画や宗教画に用いられていました。その時代の画家にとっての制作は個人としての表現ではなく、神、教会のもとに描く、とても純粋なものでした。
初めてヨーロッパを旅し、黄金背景テンペラの作品を目にしたとき、磨かれた金の荘厳な輝きとその光にも負けない明るく、それでいて素朴な色彩、そして力強い形態に魅せられてしまいました。それ迄、自分の見てきた絵画とは全く違う感動がありました。
そして、それは東洋の箔を使った絵画や装飾に何か通づる物があるように感じました。私は家業の関係でお神輿や和太鼓、仏壇などに囲まれ育ち、子供の時の遊び場はお寺の境内だったせいもあり、強く感じたのかもしれません。
現代の日本に生きる私が西洋の古典技法を使い、自分自身の内から自然に出てくる日本的美意識と西洋の技法が出合い、融合した時、どんな空間がうまれるのか…と模索しつつ制作しています。
箔という画材は昼と夜では全く違う表情をみせてくれます。光りの当たり方や視点の位置によっても変化する姿に永遠の時間と、どこまでも続く「そら」のような空間を感じています。箔という古来の画材で、流れてきた時間、自分をとりまく空気を表現する術となれば…と願っています。
現在、私は植物のたたずまいに惹かれています。生まれ、そして死んで行く、この世の摂理を一番身近に感じられるからかもしれません。ふと目にした花でさえ自分にとって、かけがえのない一つの出会いだと感じます。すべてに生命があり、時が流れていくなかで、たがいに 感応し、響き合う瞬間を、制作の中でとらえていければと苦心しています。